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建通新聞3月20日付で関住協の浅雛克己代表と佐藤隆夫代表代行へのインタビューが掲載されました。記事全文は以下の通りです。

 1981年の設立から30年以上、関西圏のマンション管理組合の支援を担ってきたNPO法人関西分譲共同住宅管理組合協議会(略称・関住協)。現在の改修工事業界をどう見ているか。淺雛克己世話人会代表と佐藤隆夫世話人会代表代行に、マンション大規模修繕工事における課題などについて話を聞いた。

 ―マンション大規模修繕工事における課題についてどう感じているか。

淺雛 当会の会員は2回目、3回目の大規模修繕工事を行うような管理組合が多い。1回目の大規模修繕の時には壁だけ塗っておけば大丈夫という考えだった管理組合も、今は設計事務所に依頼して調査診断から始めてというやり方が常識になってきた。

佐藤 改修工事の現場をよく知っている設計者が診断し仕様書を作り、管理組合が検討するようになってきた。一方で、“まやかし”と言っても過言ではないコンサルがいるのも事実。建築士は発注者と施工者の利害が対立する部分を公正な立場で解決してほしいが、法に基づく公正な判断ができる団体などを作る必要があるのではないかと思う。

淺雛 施工者には先を見越した提案を求めている。施工者もコンサルタントの言いなりではなく、自分たちで考えてより良い工法を提案してほしい。管理組合との信頼関係がしっかりできていれば提案もしやすくなるはずだ。

 ―信頼関係を構築するためのコミュニケーションはまだまだだろうか。

淺雛 コミュニケーションを図ろうと思って理事会のメンバーが仕事終わりに缶ビールを持っていっても「車だから飲めません」と。例えば月に1回は電車で現場に来てもらい、コミュニケーションを図る日を作ってもいいかなと思っている。信頼関係ができた施工業者ならこちらも頼みやすくなり、さらに信頼関係が増せば次の大規模修繕も頼もうとなる。

 ―ほかにはどのようなことが求められるか。

佐藤 もっと地元の業者が見積もりに参加できたらいい。業界を活性化していく意味でも規模に関係なく、施工能力のある業者が参加できる道を目指すのが大きなテーマではないか。見積もりに参加できる者が限定されると不正も起こりやすい。管理組合の選択肢がなくなり、特定の業者への依存度が強まるのは良くない。

淺雛 大規模修繕に関連するいくつかの業種が集まった団体があってもいいのではないか。元請けも下請けも参加し、かつ対等な関係がいい。

佐藤 イメージとしては1人でさまざまな業務をこなせる「多能工」だ。本来は地域や管理組合の要望などで組織される業者団体が多く出てきてもいいのではないかと思う。大規模修繕工事に関連する業種を網羅した協同組合などの組織が主体性を持って地域のマンションに訴えていけばいい。

 ―社会保険未加入対策に取り組むという課題もある。

佐藤 社会保険未加入業者を施工者の選考から外すという条件を設けている管理組合はまだ聞かないが、建築労働者が安全に仕事をして保証もできるように社会保障的な保険は大切だと思う。

淺雛 私のマンションでは1回目の大規模修繕工事で、元請けから下請けへの代金未払いという事例があった。これを機に、下請けにどの会社を入るのか、今どの会社が現場に入っているのか、現場代理人に確かめるようにしている。ただ、実際には、下請け業者のことまで考えている管理組合は少ない。

佐藤 施工業者の選び方でも相見積りを取ったら理事会、修繕委員会の責任は全うしたと錯覚するところが多い。選定した各社を同じ土俵の上(統一仕様書による見積り合わせ)で比較する必要があるのに、数さえそろえたらいいと考えてしまう。施工者選定の手続きについては、原則的なものを普及させてほしい。ガイドラインのようなものを国土交通省などが本気で作ってくれれば効果がある。公正な競争を広めるためには悪いことではないと思う。