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管理費・修繕積立金は「税金」と同じ優先順位
「最初の3ヶ月」の取り組みがポイント

マンション管理実践講座「滞納問題」に59人参加

 集合住宅維持管理機構(機構)と関西分譲共同住宅管理組合協議会(関住協)共催のマンション管理実践講座の第76回「管理組合運営の基礎講座」その一が5月24日行われました。テーマは「管理費・修繕積立金の滞納について」。関住協の世話人で司法書士の横山幸一郎さんが一時間にわたって支払い義務の根拠や管理組合役員がすべきことなどについて詳しく報告。関住協監査の永砂義明さん、世話人の佐藤隆夫さん、横山さんが自らの管理組合の取り組みを紹介しました。

滞納問題に高い関心

 この4月、国交省が発表した平成25年度マンション総合調査結果では、5年前の調査と比べ滞納が発生しているマンションの割合は減少しており、滞納が発生していないマンションは56.1%ですが、一方で3ヶ月以上滞納している住戸がある管理組合は37.0%で、完成年次が古くなるほど、その割合は高くなる傾向にあるとしており、この“古くて新しい”問題への関心は高く、定員の倍近い59人が参加しました。
 横山さんはまず、「この問題の解決方法は千差万別だが、なぜ払わないといけないかをきっちと説明できないといけない」として、その根拠になる区分所有法第19条と標準管理規約第25条について説明。また、「管理費・修繕積立金はいわば税金、駐車場使用料・水道料金は公共料金のようなものであり、支払義務の優先順位が高いものだということを認識してもらう」ことを強調したその上で、役員がすべきことを紹介しました。

放置すれば役員全員が責任問われる恐れも

 まず、理事長や会計担当理事だけでなく、理事・監事が滞納状況の情報を共有すべき立場にあることです。役員と管理組合(組合員)とは委任関係にあり、理事・監事は善管注意義務が問われます。仮に、滞納を知らなくても消滅時効(5年間)にかからせてしまえば、情報を知っていた理事長・会計担当理事だけでなく善管注意義務違反で責任が問われる恐れがあるからです。
 次に横山さんが強調したのは「最初の3ヶ月が大切」だということです。3ヶ月滞納すれば10万円を超えることになり、一度では回収しにくくなります。管理会社と管理委託契約している場合、最初の3〜6ヶ月は管理会社が請求することになっていますが、管理会社任せにせず「役員が汗をかく」必要があります。
 例えば、1〜2ヶ月分は「いつまでに払ってください」と書いてちょっと強めの請求書。3ヶ月からは通常の請求書と異なる催告書(「きちっと払ってください」「返済計画を立ててください」など盛り込む)。5ヶ月になると内容証明書(提訴する場合を想定して)を送る。6ヶ月を過ぎると、法的措置(支払督促・少額訴訟・調停)をとる。
 法的措置といっても多くの場合、費用の面から弁護士に依頼しにくいので、ついつい放置してしまいがちですが、横山さんは「弁護士に依頼してでも必ず回収するということを他の組合員に知らせることで、新たな滞納を未然に防ぐことになる」と述べました。また、弁護士費用については標準管理規約第60条2項に、遅延損害金とともに違約金としての弁護士費用も請求出来るとしていることを紹介しました。

地域コミュニティの活用も

 さらに、横山さんは「地域コミュニティの大切さ」も強調。管理人の奥さんや民生委員をはじめ地域のコミュニティを有効に活用して400万円もの滞納を解消した事例や、多額滞納者に「全額払え」とだけ形式的な請求をする管理会社に任せていたのではらちがあかず、理事長自ら少しずつでも滞納を減らすよう粘り強く人間関係を作り上げ、回収の成果を上げ、その人が転居する際に感謝された事例を紹介しました。

42年間滞納ゼロの取り組み

 事例発表では大阪市港区の南朝潮コーポの永砂さんが42年間滞納ゼロと続けている取り組みを紹介。そのポイントは年金の入る15日に引き落とせるようにしていますが、引き落とせない人がでた場合、管理人が督促し、それでもだめなら理事会の責任として理事長と会計担当理事が訪問し、丁寧に説明し、月内納入に努力していること。独自の会計システムで滞納者がすぐ分かるようにしていること。入居から1ヶ月以内に、滞納問題を含めマンションでのルールをまとめた「住まいのしおり」をもとに新入居者教育をしていることを挙げ、「まず最初が大事」と強調しました。
 大阪市西淀川区のプラザ歌島の佐藤さんは、基本的に滞納ゼロにしていることについて、年末(12月31日)、会計年度末の3月、総会の3つの節目を設定し、それまでに納入するよう粘り強く働きかけていると述べました。
 大阪市住之江区のファミリートーク新北島の横山さんは、3ヶ月滞納すれば駐車場使用を禁止する規定をもとに働きかけたところ、親の介護でどうしても車が要ることなどの事情も分かり、柔軟な対応のなかで、現在は1ヶ月遅れながら納入するところまでいった経験などを紹介しました。